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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 

健康 メンタルヘルス講座(19)

公務員のストレス構造を考える
B労働安全衛生への低い意識


 公務員においては、職員を健康に働かせることが自分の仕事であると考えている管理職がまだまだ少なく、労働安全衛生に関する意識は、民間に比べ大変低い印象を受けます。実際に、健康診断の受診率などを見るとそのことが顕著に表れています。職員を健康で安全に働かせるためには、職員の健康状態を把握することが必須であり、そのために定期健康診断の実施は事業主の義務であると労働安全衛生法で規定されています。しかし、都庁における健康診断の受診率は90%前後と民間企業に比べて低い値になっています。中には「個人情報保護の問題もあるから、あまり健康診断の実施を強要することはできない」などと誤った認識を持っている管理職の方もおりました。特に過重労働気味の多忙な職員は脳梗塞、心筋梗塞、うつ病などの心身の健康障害の危険にさらされている反面、なかなか健康診断を受診しに行く時間も確保できない現状があります。このような職員に対しただ単に「健康診断を受けなさい」などと指導しても意味がありません。こうした場合、仕事を調整し、受診できる時間を確保することが管理職の役割なのです。
 そもそも、適切な労働環境の整備は、健康の保持増進の観点のみでなく、職務効率の面からも非常に重要であると考えられています。徹夜での作業は、酒気帯び運転相当の注意力低下を引き起こすという研究結果があります。すなわち、長時間の残業で疲労が蓄積し、注意力が低下すれば、職務効率が低下することになります。そうなると結果的にさらなる残業時間の増加を招き、ますます疲労が蓄積するという悪循環に入ってしまうのです。そんな悪循環を防ぐには、管理職による過重労働を避けるための労務管理が大変重要になってくるのです。
 また、メンタルヘルス疾患による労働力損失も非常に大きな問題です。うつ病になりやすい方は、真面目で几帳面、それ故に仕事を断ることが苦手という、職場にとっては重要で将来性のある人材なのです。一般的にメンタルヘルス疾患の職員が1人発生すると、病気休業の期間と休業前の職務能力低下、休養後のリハビリ勤務を合わせて半年から1年程度の労働力損失があると考えられています。適正な労務管理が行われず、その結果として真面目で几帳面な労働力を長期間失うこととなれば、それこそ税金の無駄遣いではないでしょうか。
 仕事の量は減らないにもかかわらず、公務員の数は削減され、1人1人の職務分担が増えている今、『職員が健康で働いているからこそ、都民の方々に対して最高のサービスを提供できる』、そんな当たり前の原点に立ち戻る時が来ているのかも知れません。

(産業医の立場から 吉野 聡)

 05年6月号から始めました健康メンタルヘルス講座は19回を数えます。当初より寄稿協力いただきました吉野聡先生、心の響く文章どうもありがとうございました。4月からは、新たに宇佐見和哉先生にお願いする予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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