|
こんな職場、こんな仕事(第46回)
大都市東京の土木技術のサポートセンター
建設支部 土木技術センター
|
試験研究機関等のサポート組織の必要性を強調する川合分会長
|
|
土木技術センター全景
|
|
東京の地盤を解析する
|
|
アーカイブ・橋梁の墨入れ構造図を整理
|
|
築地市場前の試験舗装で手前の黒い部分がポピュラーな低騒音(排水性)舗装、奥の白っぽくみえるのが遮熱性舗装の区間(新大橋通り)
|
異常なまでの猛暑が過ぎ去った8月30日午後、東西線「南砂町駅」から歩いて10分程度にある「東京都土木技術センター」を訪ねました。庁舎3階の研修室で、土木技術センターの分会長の川合さんにお話を伺い、庁舎内を案内していただきました。
旧東京都土木技術研究所は、試験研究機関の直営を原則廃止とする総務局長通知(2005年5月27日)を受け、局内での検討を経て、何としても直営で存続をという職場の強い願いと局の判断で、「研究所」の看板を下ろし、2006年4月に「東京都土木技術センター」に変わりました。同時に職員定数が2割以上も減らされ、現在は32名です。前身の土木技術研究所は1922年(大正11年)4月東京市道路局試験所としてスタートして以来84年の歴史を持ち、大都市東京の土木技術に関する調査研究を中心に、道路・河川・公園などの都市施設整備について技術情報の提供・蓄積や現場への技術支援を行って来ました。
昔も今も技術支援や調査・研究に 重要な役割
今でこそ大規模に都市化が進み、道路・河川・公園などの整備が進んでいますが、古い時代は東京のドロドロの悪路をもう少し歩きやすくしようとか、交通の利便性を高めるための調査研究や舗装に使う材料そのものの製造を行っていました。舗装部門の歴史は長く、実績もたくさんあります。舗装は、車道の下に水を入れないのが大原則ですが、治水対策のひとつとして雨水を浸透させる透水性舗装、ヒートアイランドを緩和させるため、赤外線を反射させてしまう舗装、遮熱性舗装の実験もやっています。また、戦前の東京市の時代から下町の地盤沈下は激しく、堤防の嵩上げとか、河川堤防を作ることも建設局の事業でしたので、それらに関する調査もずっと今も続いています。
さらに道路で言えば、橋梁などの都市施設の長寿命化が大きな課題です。オリンピック時代にバーンと作ったものが、どんどん耐久年数が来て、それを更新しなければなりません。定期点検で問題のあるものについて、費用とのバランスを考えながら、改修や延命方法などの具体策を事業部に提案しています。
もう一つは、土木技術センターのメインのひとつと言えるのが、東京の地盤や地下水、地面から下の情報を一元的に管理しています。土木工事、建築工事では、地質調査や地下水位の観測を必ずやりますが、そういうデータをかなり網羅的に集めています。土木技術センターの「地盤情報システム」では、現在7万本以上のデータ集め、東京の地盤、地質の様子を調べています。
さらに土木技術センターになってから、アーカイブの組織を立ち上げました。本来、土木構造物などは50年とか70年という単位を基礎にメンテナンスを考えますが、古い手書きの橋梁の構造図などが、あちこち分散しているため、今土木に関わる図面、写真などの貴重な資料を集めて一元管理していこうという事で始まっています。
いま大事なのは、技術支援と次世代への 技術継承
このように土木技術センターでは、出先事業所の現場課題についての調査・開発や設計・施工、維持管理までの技術的課題についての技術支援、情報提供などを行なっています。また、都民からの問い合わせ、苦情等への対応を求められることも多々あります。
いま建設局職場では、団塊世代の大量退職により若手職員への技術継承が難しくなっています。土木技術センターでは、直接機材に手で触れて経験する体験型実務研修、知識の幅を広げる土木技術講習会や発表会など職員の技術力の維持向上と技術の継承に貢献しています。
最後に川合さんは、「行政が施策を進めていく上で、都民との関係において、試験研究機関のように科学的で公正なサポート組織を持っていることは、行政だけとは違った効果や役割があると思っています。せっかく築き上げた人材や知的財産をどんどん廃止していくのはいかがなものかと思っています」と語ってくれました。数日間の海外視察で思いつく都政よりも、長年の基礎的研究が活かされる都政であって欲しいと考えさせられる職場訪問でした。
東京の道路、河川、舗装、橋梁、地盤・地質、地下水、地震、液状化、測量など、何か知りたい時はご相談ください。
|
|